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海外在住の相続人(日本国籍)がいる場合の遺産分割協議書

カテゴリ: 遺産分割

こんにちは、弁護士の加藤靖啓です。

 

本日は、名古屋で多く相続についての弁護士業務を取り扱う中で、調査した内容について、皆さんと共有した方がいいのでは、と思った内容についてお話させていただければと思います。

 

昨今の国際化の中で、親族の中に海外で暮らしているという人が増えてきているのではないでしょうか。

外務省のデータによれば、令和5年10月1日時点で、129万3565人( ウクライナ、アフガニスタン、イラク及びシリアを除く)(外務省HP 「統計・お知らせ」より)もいるそうです。

 

そうした中で、海外在住者の中に相続人がいる場合の遺産分割は何か異なるものがあるのか、ということを心配される方もいらっしゃいます。

 

結論から申し上げれば、遺産分割自体は、相続人が国内にいるか、いないかで法律上異なるものは原則ありません。

相続人全員の合意があれば、遺産分割協議は成立します。

しかしながら、当然海外にいるからこその事実上の違いが生じる場合があります。

その中の一つが、遺産分割協議書に添付される書類です。

 

日本在住であれば、遺産分割協議書に相続人の署名と実印による押印があれば、その実印の印鑑登録証明書があれば、公官庁や多くの銀行は本人の意思で作成された書面であると確認し、相続手続きを行うことができます。

しかし、印鑑登録証明書は日本に住所地がない場合は、基本的に作ることができません。

そのため、海外在住者の場合は別の書類を用意する必要が生じます。

 

その代替できる資料の一つが、「署名証明」です。

これは、書類上の署名が自分のものだと証明したい海外在住者の方が、その国の日本大使館・領事館で署名すべき書類に署名をしたときに、その署名が本人によってなされたものと証明するものになります。

 

署名証明を発行には、有効なパスポートなどの本人確認書類と、サインすべき書類を用意して本人が作成場所に赴けば作成可能です(1700円相当の手数料(現地通貨)も必要となります。)。

 

ただし、相続手続きによっては、さらに追加で資料を求められる場合もありますので、全員が日本在住の場合に比べて、手続きが複雑化することが多いです。

 

また、日本大使館・領事館を利用するため、国籍が日本でない場合には、日本大使館や領事館でのお手続きは困難です。

 

そこで、時間は国籍が日本以外の方が相続人にいる場合の遺産分割協議についてお話したいと思います。

では、また次回で。

 

 

受遺者が先に死亡した場合の処理

カテゴリ: 遺言

こんにちは、弁護士の加藤です。

 

つい最近まで、大雨の日が続き、私が普段利用している名古屋駅でもつい最近雨で電車が止まるという事態が生じていましたが、そんな梅雨が明けると、一気に夏らしい季節が来るのが日本の気候ですね。

 

体調を崩さないように、気を付けていきたいと思います。

皆様もこまめに水分をとるなどして、体調にはお気をつけください。

 

今回は、無料相談を通じて、ご相談された中で、一般の方に誤解が生じていると思われる遺言の内容についてご紹介したいと思います。

それは、遺言書で財産を受け取ることとした人が亡くなった場合、その財産は誰が相続するかということです。

 

一般の人の中には、長男に家を相続させる内容の遺言書を作成しておいて、長男が亡くなった場合は、その長男の子に相続されると考える人もいるようですが、これは誤りです。

民法995条に「遺贈が、その効力を生じないとき、又は放棄によってその効力を失ったときは、受遺者が受けるべきであったものは、相続人に帰属する」と記載されており、長男が遺言者より先に死亡した場合は、その財産は、遺贈者のその他の財産に含まれることになります。

一方で、民法995条は「ただし、遺言者がその以後オンに別段の意思を表示したときは、その意思に従う」としています。

 

そのため、仮に遺言書に「その他財産」として、特定せずに誰かに相続させる内容が書かれていた場合は、その人に相続されますし、そのような記載がない場合は、遺言書がないものとして、相続人間で協議する必要があります。

 

こうした事態を避けるためには、遺言書に、先に長男が亡くなった場合は、その子に相続させるというような条件付きの条項(一般に予備的条項といいます。)を加えたり、長男が亡くなった後に、遺言書を書き換えるといった方法をとることで、希望とおりの相続をさせることができます。

 

そのため、遺言書の作成の際には様々なシチュエーションを想定しておく必要があり、また、一度遺言書を作ったとしても状況に合わせて作り直すということが必要です。

遺産分割協議の落とし穴①(金銭の負担)

カテゴリ: 遺産分割

こんにちは、弁護士の加藤です。

 

本日は、名古屋で弁護士業務を行う中できた相談について、皆さんと共有した方がいいいのでは、と思った内容について、ご紹介したいと思います。

 

相続に関する相談の多くは、これからのお手続きについてです。

これから遺産分割をするから手続きをしてほしい、将来の相続に備えて遺言書の作成などをしたい、遺言書が発見されたが、自分は何ももらえなかったから何か請求できないか、などです。

 

一方で、すでに相続手続きは完了したが、その結果不満があって相談に来るという人もいます。

その中の一つは遺産分割協議に条件を付けたがそれを守らない、というものです。

 

例えば、父親が亡くなり遺産分割協議を行い、子の一人に対してすべて相続させる代わりに母親の面倒を看るという内容にしたが、その子が面倒を看ない、といったケースです。

 

当然、他の子や母親はその子に対しどうにか面倒を見てもらうか、それができないのなら遺産分割をやり直したいと考えます。

 

しかしながら、遺産分割協議が成立すれば、相続人の一人は同協議で負担した事情を履行しないとしても、それをもって他の相続人は遺産分割協議を解除(遺産分割協議をなかったことにしてやりなおす)することはできないとするのが現在の判例です(最高裁判所判例平成元年2月9日)。

 

相続人全員の合意があれば、遺産分割協議をやり直すことも可能ですが、親の面倒を看るという約束を破った人がやり直しを受け入れることは少ないというのが現状です。

 

そのため、親の面倒を看るといった内容を遺産分割に組み込んだからといって安心することは危険だということです。

こうした将来の親の生活を守るために遺産分割協議を行うというのであれば、遺産分割中でなく、別の方法を考える必要があります。

 

簡単なところですと、親の生活のために必要な財産は親が直接相続し、面倒を看てくれる人に対し、生前贈与の形で財産を渡すことで、面倒をみることへの負担を減らすなどといった方法です。

 

他にも事情によってとることのできる方法は異なりますので、親の一人が亡くなり、残される親の生活を考えての遺産分割を考えるときは、一度専門家にご相談することが重要です。

 

 

令和6年度愛知県弁護士会サマースクール

カテゴリ: 弁護士会

こんにちは、弁護士の加藤です。

 

梅雨も明け、日本の夏らしい季節がやってきました。

私が活動しております、名古屋でも日に日に暑さが危険領域に近づきつつあることを感じており、だるさを感じるひもあります。

皆様は体調を崩されたりしないよう、十分お気をつけください。

 

しかし、夏は嫌なことばかりではなく、学生にとっては夏休みです。

学生を子に持つ親もその計画を立てているころではないでしょうか。

 

その夏休みの計画の一環として、ご紹介したいのが、令和6年8月5日から8日まで開催される小学5年生から高校生までを対象とした愛知県弁護士会主催のサマースクールです。

 

弁護士会主催と聞いて、お堅いイメージを持つかもしれません。

しかしその内容としては、ティーンコートといって、少年たちによる模擬裁判や弁護士とのディベート大会といった将来への良い経験となるものから、主権者として重要なことを織り込んだ、昔話や童話といった小さなお子様も楽しめるものまであります。

 

特に劇に関しては、役者は原則全員愛知県で活躍する弁護士で、衣装から内容にいたるまで、かなり力を入れて取り組んでいます。

かつて行われた、不思議の国のアリスをモチーフにした劇では、ハートの女王のノリに乗った演技は見ものでした。

そうした、子どもを受け入れやすいモチーフを利用していますが、その内容は独裁政権の恐ろしさ、それを防止するために民主主義がどう機能するか、民主主義を悪くしてしまうのは、どんな政治が行われるのか、を説教臭くなく、物語を通じて伝えることができる素晴らしいものでした。

 

今回の劇も、よく練られたものになると聞いていますので、ぜひご観覧ください。

夏休みの自由研究の参考にもなると思います。

 

興味を持たれた方は、愛知県弁護士会にお問い合わせください。

 

 

 

遺留分対策に生命保険を利用する場合の注意点

カテゴリ: 遺留分

こんにちは、弁護士の加藤靖啓です。

 

本日は名古屋で弁護士業務をする中で、遺留分対策をしたいという方が増えているように感じ、その点で注意するべき点をご紹介したいと思います。

遺留分対策として考えている方が、多く検討されているものの1つが、生命保険の利用です。

遺留分とは、相続財産の内一定の割合については、兄弟姉妹以外の相続人に残される分ですので、単純に相続財産を減らせば、遺留分を請求される額を減らすないし、なくすことができるようになります。

 

そして、被相続人を保険契約者及び被保険者として、保険料を支払うことで相続財産を減らし、被相続人が死亡した際に、保険会社から保険金が支払われたとしてもそのお金は受取人固有の財産のため、遺留分を考慮するための相続財産には含まれないが、お金は被相続人が財産を受け取って欲しいと考える人に渡すことができるという仕組みです。

 

これは、かつて裁判所が判断した内容ですが(平成16年10月29日の最高裁判所の判決)、同時に、こうも判断しています。

「保険受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が(民法)903条の趣旨に照らして到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となると解する」

難しく書いてありますが、

「原則生命保険は遺留分を考える上で考慮しないが、他の相続人との間で著しく不公平なら、遺留分を計算するときに考慮する」

としています。

そして、その不平等については、①保険金の額、②保険金の遺産総額に対する比率、③同居の有無や被相続人の介護等への貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人の関係、④各相続人の生活実態等の諸般の事情を考慮することとしています。

最近はネットでここまで調べ、名古屋の事務所にきて「で、結局どれくらいまで生命保険で対策ができるの?」という質問をされる方が多いです。

 

正直に申しまして、具体的な数字を挙げることはなかなか難しいというのが現状で、過去の認められた事例や認められなかった事例などを参照して判断していくことになります。

いくつか例をあげますので、参考にしてください。

 

例①上の裁判例(保険金は相続財産に持ち戻さない(遺留分対策となる))

保険金受取人自宅を増設し、被相続人の介護を行っていた

相続財産は、

動産(固定資産税評価約707万円)

その他財産が合計約5000万円(内保険金受取人は約1300万円を受け取った)

 

保険金は合計約570万円 (相続財産に対して約1割)

 

例②名古屋高等裁判所決定平成18年3月27日

(保険金は相続財産に持ち戻す(遺留分対策にならない))

相続人は、被相続人の妻(婚姻期間3年5か月)と前妻の子3人

財産は、

不動産合計約8300万円

4件の保険解約金 約100万円

子が被相続人から引き継いだ保険解約返戻金 合計約500万円

 

保険金(妻が合計約5100万円、婚姻時加入)

(相続財産に対して約6割)

相続放棄時の注意点(退職金)

カテゴリ: 相続放棄

こんにちは。名古屋で弁護士をしています加藤靖啓です。

 

本日は、自分が弁護士として法律相談に対応するなかで、多いなと思った内容についてお伝えしようと思います。

 

テーマは、相続放棄時の退職金の取り扱いについてです。

忘れないように初めに注意しなければならないのは、法律の解釈は個別的な事情によって左右されるものであるということです。

そのため、法律に基づいて主張や手続きを行う際には、あらゆる事情を考慮して、自分が求める結果が得られるのか考えなければなりません。

特に相続放棄は、ある行為をしてしまうと、相続放棄をすることが非常に困難になることがあります。

そのため、相続放棄についてお考えの方は、自分ひとりで結論を出さずに、専門家にご相談するのがよいでしょう。

 

本題に入りますが、相続放棄について考えている相続人からの相談では、相続放棄をしても遺族として退職金を受け取ることができるのか、というものが多いです。

 

結論から申し上げますと、その受取人が誰かによって変わります。

 

相続放棄をする際には、「相続をする」ような行為をしてはいけません。

例えば、相続人の財産を売ったり、消費したり、相続人になったことをしながらそのままにしておく(3か月を経過する)などです。

 

逆にいえば、もし、相続人が亡くなったことを理由に支払われるお金があるとしても、そのお金が亡くなった人のものでなければ、相続放棄には、原則として、影響しないといえます。

 

退職金の場合は、誰に支払われるかは、就業規定(規則)や退職金規定のような亡くなった方が務めていた企業や団体において定められている規則に従って基本的には判断します。

死亡退職金について受取人が亡くなった方ではない場合、は相続財産には含まれず、基本的は、退職金は相続財産に含まれませんから、これを受け取ったとしても、相続放棄をすることができるといえます。

注意していただきたいのは、亡くなった方が転職後に亡くなったケースでは、未払いとなっている前職の退職金の支払いがされる場合があります。

これも同じく、受取人が誰であるかが問題となりますが、死亡退職金出ではない場合の退職金の多くは受取人が退職者自身となっていると思われますので、その場合、退職金は亡くなった方の財産と判断される可能性が高いです。

そのような退職金を受け取ると、相続放棄をすることができなくなる危険性が大きいです。

 

一方で、退職金は規則等がなく慣例的に支払われている場合もあります。

そのような場合は、受取人が誰になると考えられるのか、改めて検討する必要がありますので、その退職金を受け取ったとしても相続放棄が可能であるかは、専門家の意見を参考にする必要があります。

 

ここまで様々なケースについて説明しましたが、最初に申し上げたとおり、相続放棄については後戻りできない場合が多いですので、何か、ある人が亡くなったことで、請求できるものがあるとの通知を受け取ったとしても、相続放棄を少しでも考えている場合は、一度、請求する前に専門家の意見を確認することを強くお勧めします。

その際には、専門家が判断できるように、請求するための案内など、どういった内容の請求なのかが分かる資料も手元において相談するとスムーズに相談に対応してもらえます。

 

何かあったときには、詳しい人に相談するということは何事にも共通する重要なことです。

 

 

 

 

 

広域交付制度について

カテゴリ: 戸籍・住民票

こんにちは。

今日は弁護士業務を行う中で、知っていただきたい制度について皆さんにお知らせしようと思います。

 

本日の内容は、戸籍謄本等の広域交付制度です。

これは、令和6年3月1日から開始された制度で、「①本人②配偶者③父母、祖父母などの直系尊属④子、孫などの直系卑属」の戸籍証明書等の請求を最寄りの市区町村窓口で行うことができるとするものです。

このように書くと、今と何が違うんだ、ということになりそうですが、この制度の目玉は「最寄りの市区町村役場」の窓口で(そこが本籍地でないとしても)、他の市区町村を本籍地とする戸籍をまとめて取得することが可能になるのです。

今までは、各本籍地を管轄する市区町村に対して、戸籍謄本等を請求しなければならず、都度戸籍の習得するたびに、必要な戸籍を取得するまで、それぞれの市区町村に対して請求しなければなりませんでしたが、基本的にそれが一括で行えるようになったということになります。

 

ただし、注意が必要な点がいくつかあります。

代表的なものとしては以下のものがあります。

1つ目は、コンピュータ化されていない戸籍については、対応しておらず、また、一部事項証明書や個人事項証明書も対応外ということです。

それら証明書が必要な場合は、従来どおりの請求をする必要があります。

 

2つ目は、この制度により請求できる対象に、兄弟姉妹は含まれませんので、取得することのできる父母の戸籍から除籍した兄弟姉妹がいる場合は、取得できる戸籍からその人の本籍地を調査し、従来どおりの請求をする必要があります。

 

3つ目は、郵送や代理人による請求は基本的にできず、請求者本人が戸籍担当窓口に行き、顔写真付きの身分証明書(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)の提示を求められます。

 

こうした注意点に配慮すれば、従来よリ格段に戸籍の収集が楽になりました。

名古屋で相続について法律相談を受ける際も、この制度のおかけである程度戸籍が習得されており、相続関係が明確となり、受任した際も手続きが迅速になるケースがあります。

 

この制度は、代理人には使用できませんので、広域交付制度を利用する場合は依頼者本人の理解とご協力が不可欠です。

名古屋では、未だに、よく知らないという方もいらっしゃるようですので、広域交付制度についてこの記事をきっかけに1人でも理解してくださる方が増えればと思います。

 

法務省 戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)

 

 

相続財産の調査方法(不動産①)

カテゴリ: 相続調査

こんにちは。

 

日々弁護士業務を行う中で知りえたことなどを皆さんと共有できればと思います。

本日は、相続が開始したときの、不動産に関する財産調査の方法についてです。

特に、今回は不動産があるか調べようとして陥りがちな事情についてお知らせしたいと思います。

 

身近な人が亡くなり、相続が開始し、遺産分割をしようとするとき、どんな財産を所有していたかを調べることになると思います。

もし、財産がなく、借金がたくさんあるという状況であれば、相続放棄を選択することになるでしょう。

そのためにも、相続財産について調べることはとても重要です。

 

そして、人が持つ財産の中でも不動産は価値が大きいことが多く、調査の優先順位としては高いといえるでしょう。

しかし、何らの知識もなく調べようと思っても難しいと気づくでしょう。

当然ですが、名札がそのままついているわけではありません(家なら表札くらいはあるかもしれませんが)。

 

そんな中、亡くなった人の持ち物を整理していると、「固定資産税通知書」というものを発見することがあると思います。

固定資産税とは、土地・家屋・償却資産に対して課税される市税のことで、これらを所有する人に毎年課されることになります。

固定資産税通知書とは、その固定資産税を算出するために、その人が有する固定資産と、その価値について通知する書面のことです。

 

そこで、相続人の中には、亡くなった人が所有する土地、建物といった不動産はこれに書いてあるものだけだと思い、相続手続きを進めてしまいがちです。

 

しかし、固定資産税通知書の説明でもわかる通り、この通知がされるのは、固定資産税が課されるものですので、評価額が一定額以下(一般に、土地なら30万円以下、建物は20万円以下)

のものは表示されておりません。

また、公共の道路に面しているような場合も固定資産税がかからない場合があります。

 

つまり、固定資産税通知だけにたよって、不動産の調査をすると、抜けが生じるおそれがあるということです。

 

固定資産税通知を見つけた場合は、その通知を出した市区町村に被相続人名義の固定資産課税台帳の「名寄帳」(の写し)を取得しましょう。

これには、原則、請求に係る者が所有する不動産が課税にかかわらず一覧となっていますので、固定資産税通知書の抜けをカバーすることができます。

 

ただし、名寄帳はその市区町村が把握しているものに限られる上、その年の1月1日の時点の記録ですので、その年が始まり被相続人が亡くなるまでの間に手放したり、新しく取得したりしていると、実際の相続財産と齟齬が生じる恐れがあります。

また、市区町村によっては名寄帳の写しの交付・閲覧の手続していない場合があります(名古屋市もその1つです)。

 

1つの調査で万全なものなどないということですね。

 

本日はここまでです。

なかなか範囲の広い分野ですので、改めて続きをどこかでお知らせできればと思います。

 

さようなら

取得の難しい戸籍(樺太編)

カテゴリ: 戸籍・住民票

こんにちは。

今日は弁護士業務をしている中で、少し困ったことがあり、その対処方法についてメモを残す意味で書いていきたいと思います。

 

弁護士業務を行うなかで、ある人の親族関係について調べなければならないことがあり、そのために、戸籍を取得しなければならないことがあります。

戸籍を取得する手続自体は、弁護士の場合、職務上請求と呼ばれる方法により、特別な用紙を用いて請求しますが、そのほかの点では基本的に一般人の方とさほどは変わりません。

調べたい人の戸籍を管理しているところに対して、戸籍等謄本等職務上請求書を、戸籍を管理しているところへ、決められた方法で郵送申請をして取得します。

大抵は、その戸籍のある市区町村役場に対して申請を行います。

一方で、例外もあります。

例えば、名古屋市の戸籍であれば、本籍のある区長に対して申請しますが、郵送で申請する場合は、一部例外を除いて、「証明書交付センター」というところに申請書や手数料の小為替などを送って申請することになることがあります。

 

そんな中、ある日、ある人の相続のために戸籍を収集していると、その人が樺太の出身であることが分かりました。

樺太は、御存知のとおり、複雑な歴史的経緯があり、戸籍の取得は他と比べると難易度が高いことがあります。

樺太を本籍とする一部の戸籍は現在外務省が管理しており、問い合わせをすることで、取得できるものもあるようですが、ごく一部であることが分かりました(大泊郡知床村、大泊郡富内村、大泊郡遠淵村、敷香郡内路、敷香郡散江村、元泊郡元泊村)。

(一般社団法人 全国樺太連盟Q&Aより)

 

そのような場合は、その戸籍が必要な手続を行う機関に問い合わせて代替手段を確認すると解決策が判明することがあります。

私の場合は、預金口座解約のために必要な戸籍でしたので、その預金取り扱い会社に問い合わせたところ、準備できるものだけでよいとの回答でした。

 

この事例で学んだことは、普段の方法が通じないときは、一歩俯瞰して状況を整理し、その困難な状況を回避する方法を模索することが重要だということでした。

 

今後も困難な事情が現れたときは、今回の事例を思い出そうと思います。

遺言書に書く内容(預貯金)

カテゴリ: 遺言

こんにちは。

今週名古屋の事務所に向かうため、バス停でバスを待っていると、雪が降ってきました。

子どものころは、少しでも雪が降れば大はしゃぎだったはずなのに、寒くてイライラしている自分がいることに気が付いて、何か大切なものが零れ落ちているような気がして少し落ち込みました。

 

さて、本日は、弁護士の業務を行う中で、疑問を持ち調べたことを皆さんと共有したいと思います。

 

本日の疑問は、「財産に預貯金がある場合に、どこまで、記載すればいいのか」です。

 

遺言書作成のために、自分の財産を挙げていく中で、几帳面に調べて残高を1円単位まで書いた詳細なリストを用意している方もいれば、通帳がどこかにいってしまい、残高はおろか支店名すら覚えていない、というような方までいます。

分からない場合は今回は置いておくとして、詳細なリストが用意されていた場合に、これをどこまで、特に残高まで書くべきなのだろうか、ということをお話したいと思います。

 

通常、遺言者の意思が明確であればいいので、特定の口座に入っているお金を特定の人に相続させる場合は、「銀行名」「支店名」「預金の種類」「口座番号」によって、相続財産である預貯金を特定することができる場合がほとんどで、これで足りるのが原則です。

 

一方で、「残高」は書くべきではない事項になります。

 

なぜなら、残高まで遺言書に記載してしまうと、遺言者の意思としては、その額についてまでしか意思表示がされていないことになり、相続開始時に1円でも、その記載された残高以上の額が存在した場合、遺言書に記載のない相続財産として、別途遺産分割協議が必要となってしまう場合があるからです。

 

できるだけ自分の財産は正確に遺言書に記載しておきたいという気持ちは分かりますが、あまりに限定しすぎた記載は避けるべきです。

 

せっかく、自分が亡くなった後に、残された相続人の手を煩わせないことを目的の1つとして作られる遺言書ですから、このような隙がないように気を付けなければなりません。

そのためにも、遺言書の作成を考えている場合は、相続に強い弁護士にご依頼されることをお勧めします。

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