遺産分割協議の落とし穴①(金銭の負担)

遺産分割

こんにちは、弁護士の加藤です。

 

本日は、名古屋で弁護士業務を行う中できた相談について、皆さんと共有した方がいいいのでは、と思った内容について、ご紹介したいと思います。

 

相続に関する相談の多くは、これからのお手続きについてです。

これから遺産分割をするから手続きをしてほしい、将来の相続に備えて遺言書の作成などをしたい、遺言書が発見されたが、自分は何ももらえなかったから何か請求できないか、などです。

 

一方で、すでに相続手続きは完了したが、その結果不満があって相談に来るという人もいます。

その中の一つは遺産分割協議に条件を付けたがそれを守らない、というものです。

 

例えば、父親が亡くなり遺産分割協議を行い、子の一人に対してすべて相続させる代わりに母親の面倒を看るという内容にしたが、その子が面倒を看ない、といったケースです。

 

当然、他の子や母親はその子に対しどうにか面倒を見てもらうか、それができないのなら遺産分割をやり直したいと考えます。

 

しかしながら、遺産分割協議が成立すれば、相続人の一人は同協議で負担した事情を履行しないとしても、それをもって他の相続人は遺産分割協議を解除(遺産分割協議をなかったことにしてやりなおす)することはできないとするのが現在の判例です(最高裁判所判例平成元年2月9日)。

 

相続人全員の合意があれば、遺産分割協議をやり直すことも可能ですが、親の面倒を看るという約束を破った人がやり直しを受け入れることは少ないというのが現状です。

 

そのため、親の面倒を看るといった内容を遺産分割に組み込んだからといって安心することは危険だということです。

こうした将来の親の生活を守るために遺産分割協議を行うというのであれば、遺産分割中でなく、別の方法を考える必要があります。

 

簡単なところですと、親の生活のために必要な財産は親が直接相続し、面倒を看てくれる人に対し、生前贈与の形で財産を渡すことで、面倒をみることへの負担を減らすなどといった方法です。

 

他にも事情によってとることのできる方法は異なりますので、親の一人が亡くなり、残される親の生活を考えての遺産分割を考えるときは、一度専門家にご相談することが重要です。

 

 

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