韓国
韓国籍の方の相続(代襲相続)
こんにちは、名古屋の事務所で弁護士をしています加藤です。
今回は、以前このブログで紹介しました韓国の相続法における法定相続と日本の法定相続分の違いで説明しました代襲相続について、少し説明不足かなと思う点がありましたので、追加で説明します。
1 韓国の第1順位の相続は配偶者と「直系卑属」
韓国の民法では、第1順位の相続人について配偶者と「直系卑属」と定めており、日本が配偶者と「子」と定めているのに比べて範囲が広くなっています。
2 代襲相続とは
韓国も日本も本来相続人となる人が先に死亡(相続欠格、廃除(日本の場合))していた場合、その人の代わりに相続人なる「代襲相続人」がいます。
ただし、その内容は韓国と日本とでは異なります。
韓国の場合は、先に死亡した人(直系卑属又は兄弟姉妹が相続人になる場合)の配偶者と直系卑属が代襲相続人となります。
一方で、日本の場合はその先に亡くなった人の子が代襲相続人となりますが、その配偶者は代襲相続人とはなりません。
韓国のように配偶者に代襲相続を認めることは少数派のようです。
3 事例1(父親Aが死亡、配偶者B、長男C、先に死亡した二男Dの配偶者Eと子Fが相続人となる)
①韓国の場合は、配偶者は他の相続人に対して5割増しで計算されます。
そのため、事例1の場合の法定相続分は次のようになります。
B:C:D(既に死亡)=3:2:2
②先に死亡していたCの「2」の法定相続分については、代襲相続人であるEとFが次のように取得します。
E:F=3:2
③よって、Aの法定相続分についての最終割合は次のようになります。
B:C:E:F=15:10:6:4(Bが15/35,Cが10/35,Eが6/35,Fが4/35)
④日本の場合は、配偶者と子(複数にいる場合は子で等分)の相続分は同じで、かつ、代襲相続人は子のみなので、次のようになります。
B:C:F=2:1:1(Bが1/2,Cが1/4,Fが1/4)
4 事例2(父親Gが死亡、配偶者H、長男I、二男Jが死亡しており、Iに子K、Jの子がLとMが相続人となる)
事例1と違い、法定相続人の配偶者と子が死亡しており、孫のみが相続人となっている場合です。
このようなとき、K、L、Mの孫は直系卑属として相続人となるのか、それとも、KはIの代襲相続人、LとMはJの代襲相続人となるかが問題となります。
なぜなら、相続人となる場合は法定相続分が
K:L:M=1:1:1(各3分の1ずつ)
になるのに対し、代襲相続人となる場合は、
K:L:M=2:1:1(Kが1/2、LとMが1/4ずつ)
となることとなり、相続分が異なることになるからです。
この点について、2001年3月9日大法院(日本の最高裁のようなもの)において、下の代襲相続人として扱うことと定められました。
確かに文言上は相続人と扱うように思われますが、結果の方の妥当性をとったと評価されます。
つまり、一部の相続人となる子が死亡していたか(事例1のような場合)、元来相続人となる人が全員死亡したか(事例2のようなケース)で相続分が異なることは妥当でないからです。
そのため、事例1のケースでもCが死亡しておりその子がいた場合でも、法定相続分の割合は変更されないことになります。
その他にも韓国と日本の相続において違いがありますので、次回もまた韓国と日本の違いについて説明したいと思います。
韓国籍の方の相続(相続分の譲渡)
こんにちは、名古屋の事務所で弁護士をしています加藤です。
今回もまた前回の続きとして韓国籍の方の相続について説明したと思います。
今回は、韓国の相続法における相続分の譲渡と取戻し権について説明したいと思います。
1 相続分の譲渡
韓国の法律でも、日本の法律でも、相続人は、遺産分割協議前であれば相続人かそうでないかに問わず、別の誰かに対し、相続分を譲渡することができます。
相続分の譲渡を受けた人は、その譲渡を受けた割合の限りで相続人としての地位を承継し、相続財産を取得する立場を得、また義務を負います。
ただし、この時原則として相続分を譲渡したとしても、債権者の許可がない場合は譲渡人に対しても依然債務の弁済を求めることができますので、債務を免れる方法としては使えません(債務を免れるためには、相続放棄か限定承認の手続が必要になります。)。
また、相続分の譲渡について裁判所等別の第三者の許可を得ずとも相続分の譲渡は可能で、特に書面等もなく、書面を作り行う場合も、定まった形式はありません(前述のとおり、譲渡人が債務の免除を受けて相続分譲渡を行う場合は、債権者の許可が別に必要となります。)。
2 取戻権について
相続分の譲渡を相続人以外の第三者に行った場合、韓国も日本も他の相続人は、単独で、その譲渡を受けた人に対し、その価格と譲渡費用を償還することで、その相続分を譲受けることができます。
相続人でない第三者に相続分が移動することで、相続手続きが煩雑化するのを防ぐためとされています。
この取戻権は、韓国も日本も形成権と解されており、相続人がこの権利を行使し、必要な費用を償還すれば、譲受人の合意や金銭の受取の有無に関わらず、効力が生じます。
取戻権を複数いる相続人の内1名が単独で行使した場合に、その譲られていた相続分のの帰属については、韓国も日本も具体的に法律で定めれれていませんが、権利行使しなかった人に取得させる理由は特にない以上、いずれもその権利行使をした者に帰属するというのが、主流のようです。
しかし、この取戻権については、韓国と日本では差異がある部分もあります。
韓国では、特にその権利行使時期について定めはなく、相続分譲渡がなされ、遺産分割協議が行われるまでの間であれば、基本的にいつでも行使できるものとされています。
一方、日本では、「1箇月以内に行使しなければならない」と定められており、権利行使に制限が課せられています。
この一箇月についての起算点については、争いがありますが、主流の考え方は「譲渡時から1箇月以内」と考えられているようです。
大切な相続分の取戻権について権利行使ができる期限に差異がありますので、韓国籍の方がいる相続についての適用法令の判断には慎重になる必要があります。
次回についても、日本と韓国における相続の違いについて説明したいと思います。
韓国籍の方の相続(限定承認)
こんにちは、名古屋の事務所で弁護士をしています加藤です。
今回もまた前回の続きとして韓国籍の方の相続について説明したと思います。
今回は、韓国の相続法における限定承認について説明したいと思います。
1 限定承認
限定承認とは、相続の開始を知った日から3箇月以内に被相続人の最後の住所地である家庭裁判所に申立てを行うことで、負の債務について、正の財産の限りで相続する制度のことで、債務があったとしても財産の限度で相続し、財産を処分して債務を弁済すればそれ以上債務を負わないようにできるということになります。
主な手続き内容について日本と韓国都では同様のものになります。
ただし、日本と韓国とで制度に異なるところがあります。
たとえば、手続を行う主体です。
日本の場合は、相続人全員で限定承認手続を行う必要があります(相続放棄を行う場合は、その人は最初から相続人ではなくなりますので、相続放棄をしなかった人全員で行う必要があるということです。)。
一方で、韓国の場合は相続人それぞれで単純承認するか、限定承認するかを決めることができることになっているので、誰かが単純承認したとしても、限定承認を行うことができます。
このように制度に異なることでの差異がありますので、注意が必要です。
2 特別限定承認制度
前回の相続放棄の回でも説明しましたが、相続放棄や限定承認ができる3箇月(相続の開始を知った日から3箇月)以内の期間内で相続放棄等の手続を行わず単純承認をしてしまったときの対処が日本と韓国とでことなります。
日本の場合は、相続の開始を知った日から3箇月経過後に新しい債務を知った場合には、財産を全くないと信じていて、相続財産の調査を行うことが困難な事由が存在しており、そう信じたことに相当な理由がある場合には、その債務を知ったときから3箇月以内に相続放棄を行うことができます。
しかし、これは日本の判例によって認められた手続になりますので、韓国法が適用される場合には、この手続きはできません。
韓その代わり韓国では、相続の開始を知った日から3箇月以内に、債務の存在を知らなかったために、相続放棄や限定承認を行えなかった場合の制度として「特別限定承認制」があります。
この制度の内容は、相続人が相続債務が相続財産を超過する事実を重大な過失なく、期間内に単純承認(3箇月経過をした場合に含む)をした場合にはその事実が分かった日から3月内にできる限定承認のことです。
次回もまた、日本と韓国における相続の違いについて説明したいと思います。
韓国籍の方の相続(相続放棄)
こんにちは、名古屋の事務所で弁護士をしています加藤です。
今回もまた前回の続きとして韓国籍の方の相続について説明したと思います。
今回は、韓国の相続法における相続放棄について説明したいと思います。
1 相続放棄について
相続放棄とは、相続の開始を知った日から3箇月以内に被相続人の最後の住所地である家庭裁判所に申立てを行うことで、相続人たる地位を喪失させ、正の財産も不の債務を相続しないで済むようにする制度のことです。
相続放棄という制度自体には、日本と韓国とで大きな違いはありません。
このとき、申立てを行う家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地となりますので、日本在住の韓国籍の人が亡くなった場合、日本の家庭裁判所に申立てを行うことになります。
また、3箇月の期間について、申立てを行えば延長が認められるというのも、共通しています。
2 相続放棄の範囲について
前回の記事でも書きましたとおり、相続人の範囲が日本と韓国とでは異なるため、被相続人が大きな債務を抱えていて、相続人全員が相続放棄をすることを考えたときに、その範囲は異なることになります。
特に注意が必要なのは、被相続人に孫がいる場合です。
日本であれば、第1順位となる被相続人の子が相続放棄を行った場合、さらにその子(被相続人の孫)は相続人とななりませんので、孫が相続放棄を行う必要はありません。
一方で、韓国の場合は、第1順位となる相続人は「直系卑属」となっていますので、被相続人の子が全員相続放棄をしたとしても、次に近い親等の直系卑属である被相続人の「孫」が相続人となるため、孫も相続放棄を行う必要があります。
また、「兄弟姉妹」の相続放棄にも注意が必要です。
日本の場合は、兄弟姉妹が被相続人より先に死亡していた場合、その子が代襲相続人となりますが(配偶者は代襲相続人になりません)、その子も死亡していた場合には、さらにその下へ代襲相続が起きることはありません。
一方、韓国の場合は、代襲相続人は「直系卑属」とされているので、子に限られず、また、配偶者もまた代襲相続人となりますので、ここでも、日本より広範囲に相続放棄が必要な範囲が広くなります。
3 相続放棄の期間経過後の取り扱いについて
被相続人が亡くなって、しばらく経過した後で被相続人の債権者から相続人に通知があり、被相続人に大きな債務があり、相続放棄をする必要があることを知った、というようなケースがよくあります。
このようなときに、日本の場合は、判例によって「相続人が、…相続放棄をしなかつたのが、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があつて、相続人において右のように信ずるについて相当な理由があると認められるときには、相続人が前記の各事実を知つた時から熟慮期間を起算すべきであるとすることは相当でないものというべきであり、熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算すべきものと解するのが相当である。」(最二小判昭和59年4月27日)とされ、相当の理由が認められれば、債務を知った日を「相続の開始を知った日」として、その日から3箇月以内に相続放棄の手続を行えば、相続放棄が認められることがあります。
一方で、韓国には、そのような判例がない代わりに、債務があることを知らなかったことについて、重大な過失がなかったときには、「特別限定承認」を申し立てることが認められます。
これにより、相続放棄のように何も相続しないというわけではなく、相続する財産の限りで責任を負い、それ以上の債務を負担しなくてもよくなります。
このように相続放棄の分野において、日本と韓国では異なる点も多く注意が必要です。
次回もまた、日本と韓国における相続の違いについて説明したいと思います。
韓国籍の方の相続(相続欠格)
こんにちは、名古屋の事務所で弁護士をしています加藤です。
今回もまた前回の続きとして韓国籍の方の相続について説明したと思います。
今回は、韓国の相続法における相続欠格について説明したいと思います。
相続欠格とは、相続人となる地位のある人であったとしても、法律に定められた一定の事由が生じた場合には、相続することができないようにする制度のことです。
韓国では、大きく分けて2種類の欠格事由(相続権がはく奪される理由)があります。
①被相続人等を死なせようとするような行為をしたこと
たとえ、相続人であったとしても、被相続人に対し刑法に定められる「殺人」「殺人未遂」「傷害致死」といった行為をした場合は、欠格事由に当たり、相続権がはく奪されます。
行為によって、その被害者について範囲が異なります。
「殺人」と「殺人未遂」の場合の「被相続人等」とは、直系尊属、被相続人、その配偶者、相続の先順位や同順位にある者のことをいい、「傷害致死」の場合は、相続の先受遺や同順位の相続人は排除されます。
日本でも同様の欠格事由が定められていますが、その対象は「被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者」であって、殺人カ殺人未遂が対象行為になりますので、韓国における欠格事由の方が、客体も行為態様も日本より広いことになります。
一方で、日本の場合は、自分は上記のような行為をしていないとしても、被相続人が殺害されたと知りながらこれを告発しない場合、原則(行為者に是非の弁識能力がなかったり、その行為をした人が自己配偶者又は直系血族である場合は除かれます)、欠格事由に該当すると定められているため、日本の方が被相続人が害されることに寛容とは言えないでしょう。
②被相続人の遺言に関する不正行為
詐欺又は脅迫により被相続人の相続に関する遺言又は遺言の撤回を妨害したり、詐欺又は脅迫によって被相続人の相続に関する遺言をさせたり、遺言書を偽造・変造・破棄又は隠匿したりした場合には相続権がはく奪されます。
これらと同様の行為が欠格事由に該当することは、日本も同じですが、韓国と日本では遺言書におけるルールが異なる部分もありますので、全く同じ行為でも欠格事由に当たるかは判断が異なる場合があります。
韓国では基本的上記法律に定められたこれら事由によって法律上当然に相続権がはく奪されます。
これに対して、日本の場合はこうした当然にはく奪される相続欠格以外にも被相続人に対する重大な非行があった場合に被相続人が家庭裁判所への申立てを行うことで(生前でも遺言書に書いておくことで、死後遺言執行者によって申立を行うことも可能)、相続権をはく奪する「廃除」という相続権をはく奪する制度がありますが、韓国にはありません。
こうした相続欠格についての制度は国ごとの風習や価値観等によって異なるところですので、注意が必要です。
次回もまた、日本と韓国における相続の違いについて説明したいと思います。
韓国籍の方の相続(法定相続分)
こんにちは、名古屋の事務所で弁護士をしています加藤です。
前回の続きとして韓国籍の方の相続について説明したと思います。
今回は、韓国の相続法における法定相続と日本の法定相続分の違いを説明したいと思います。
ある人が亡くなったとき、その人(被相続人)の財産が誰に相続されるのかについて、日本の法律でも、韓国の法律でも定められています。
その相続をする人を「法定相続人」といい、相続する割合についてを「法定相続分」といいますが、日本と韓国では異なります。
まず、法定相続人についてです。
日本での法定相続人は以下のとおりです。
①第1順位
配偶者と子ども(代襲相続人)
②第2順位(被相続人に子どもがいない場合)
配偶者と直系尊属
③第3順位(被相続人に子どもも直系尊属もいない場合)
配偶者と兄弟姉妹(代襲相続人)
日本では配偶者以外の法定相続人については、存在しない場合や死亡している場合、相続放棄をした場合など相続人ではなかった場合には、次の順位へ進みます。
韓国での法定相続人は以下のとおりです。
①第1順位
配偶者と直系卑属(その代襲相続人)
*代襲相続とは、被相続人より先又は同時に死亡している場合(韓国では相続放棄も含まれます)には、その次の世代(被相続人からみて、孫やひ孫)が代わりに相続人となります。
②第2順位(直系尊属がいない場合)
配偶者と直系尊属
*日本では直系尊属も直系尊属がいない場合は、第3順位に移りますが、韓国では配偶者の単独相続になります。
③第3順位(配偶者がいない場合)
兄弟姉妹(その代襲相続人)
④第4順位(兄弟姉妹がいない場合)
4親等内の傍系血族(親子関係にない親族)
叔父、叔母、従兄妹、祖父母の兄弟姉妹などです(日本では法定相続人とはなりません。)
これをみれば、韓国の場合は、日本より広く、関係性の薄い関係まで相続人となる可能性があります。
この財産が広がる関係を望むのであれば、韓国法は適切ですが、同時に複雑な関係になることを望まないのであれば、遺言書などの対策を行う必要があります。
次に法定相続分です。
日本でも韓国でも法定相続人と同時にどれくらいの割合で相続するのかという「法定相続分」が定められています。
しかし、第1順位や第2順位のような日本と韓国で法定相続人が重なるところでも法定相続分が異なるところがあります。
日本での法定相続分は以下のとおりです。
①第1順位
配偶者:子ども(または代襲相続人)=1:1
*配偶者以外の相続人については、複数人いる場合は頭数で割ります。
②第2順位
配偶者:直系尊属=2:1
*配偶者以外の相続人については、複数人いる場合は頭数で割ります。
③第3順位
配偶者:兄弟姉妹(または代襲相続人)=3:1
*配偶者以外の相続人については、複数人いる場合は頭数で割ります。
*兄弟姉妹が相続人となる場合は、被相続人と親が片方しか一致しない場合(いわゆる半血兄弟)は、両親が一致する兄弟(いわゆる全血兄弟)の半分になります。
韓国での法定相続分は以下のとおりです。
①第1順位
配偶者:直系卑属=1.5:1
*直系卑属が複数人いる場合は、等しい割合とし、配偶者はその5割増しになります。
配偶者と子どもが1人の場合の割合は
配偶者が3/5、子どもが2/5となります。
配偶者と子どもが3人の場合の割合は
配偶者が1/3、子どもが2/9ずつとなります。
②第2順位
配偶者:直系尊属=1.5:1
*直系尊属がいない場合は、100%を配偶者が相続します。
③第3順位
相続人は均等に分けます。
*被相続人と親が片方しか一致しない場合(いわゆる半血兄弟)は、両親が一致する兄弟(いわゆる全血兄弟)の半分になります。
④第4順位
相続人は均等に分けます。
このとおり、相続分についても日本と韓国で異なります。
韓国では、配偶者がより保護される結果となります。
相続において日本の法律を適用させるか、韓国の法律を適用させるかの重要なポイントとなりますので、注意が必要です。
その他にも韓国と日本の相続において違いがありますので、次回もまた韓国と日本の違いについて説明したいと思います。
韓国籍の方の相続(適用法)
こんにちは、弁護士の加藤です。
名古屋の事務所で相続を主に取り扱っている自分ですが、ここ最近なぜか韓国籍の方の相続手続きのご相談が相次ぎました。
僕の中の韓国といえば、母親と妹が見ているドラマを横目でつまみ食い的に見る印象のあるものでした(何本かは自分もはまって通して見直したりしました)。
韓国ドラマの中には、韓国の財閥とドロドロとした陰謀をテーマにしたものもいくつかありましたが、話の筋からすると、妙に相続について違和感のある考えを前提にしているような気がするものもありました。
そこで、最近韓国籍の方の相続を取り扱うこともあるので、いくつか本を取り寄せて、韓国の相続について勉強しましたので、この場で共有させていただければと思います。
そもそも、勉強を始めようと思って、まず思ったのが、「韓国の相続法を勉強して日本の弁護活動に意味があるのか。韓国籍の人も日本で亡くなった場合は、日本の法律が適用されるのでは、あまり役に立たないのではないか。」ということです。
この点、まず日本の法律である法の適用に関する通則法36条には、
「相続は、被相続人の本国法による。」
と定められています。
つまり、亡くなった方が韓国国籍を有する場合、その相続については、原則として、韓国の民法が適用されることになります。
例外としては、遺言で準拠法を日本法によることを定めることで、日本法が適用できると解釈されています。
根拠としては、法の適用に関する通則法41条において、当事者の本国法に依るべき場合において、その国の法に従えば日本法によるべきときは、日本法による、とされています。
これに対して、韓国法においては、日本と同じく原則相続は、被相続人の本国法による、としつつ、遺言で被相続人の常居所の国の法律を相続の準拠法に指定したうえ、死亡の時まで居住している場合には、被相続人の相続は、その国の法律を適用できると定められています。
そのため、韓国籍を有する方が、日本で死亡した場合には、原則韓国法が適用され、例外的に遺言書がある場合に、「日本の法律に従って相続をする。」と定めている場合は、日本の法律が適用されます。
韓国籍の方が亡くなった場合には、日本の場合と同じく、遺言書の有無を確認するべきでしょう。
また、後日のブログでも取り上げますが、韓国法に依る場合は、録音による遺言という形式もありますので、日本のように紙だけ探せばいいというものではありません。
そして、韓国も日本と同じく遺言書については、形式が法律で定められていますが、日本とは異なるものもありますので、有効性判断については、日本法によるものとは違う配慮が必要です。
もし、自分の相続では、日本法を適用して欲しい韓国籍の方がいる場合は、韓国法に詳しい専門家に相談されることをお勧めします。
次回は、韓国籍の方が韓国法を適用するか日本法を適用するかの判断材料とするために、韓国と日本の相続の違いについて解説します。
それでは、また次回にお会いしましょう。
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